詩吟と漢詩
詩吟は言葉の表現が大切です。詩の持っている、言葉の表現について
研究するために、漢詩について理解する必要があります。
漢詩というものは情を素直に描写表現する。すなわち人の心が物に感
じて声をなすもの。
漢詩は、心を清め、氣を養い情をこまやかにし、そして人間性を豊か
にする。人間の心が持っている、喜・怒・哀・楽、を言語により味
わう、奥の深い詩の世界です。
この詩の世界に入るために、多くの先人が残した色んな漢詩を良く
読み鑑賞する事を進めます。
多読、精読して、自分の心がどこに惹かれるかを確かめてみること
です。そしてそのうち自分が好きになった詩を何回も読み返し、
イメージすることが出来る様にし、詩の心を読み取ることです。
その方法として、漢詩を好きになり自分で漢詩を作ってみることも、
一つの方法です。
漢詩について基本的なことを説明します。
漢詩は、大きく分けると古体詩と近体詩に分けられます。
今回は、近体詩について説明します。
近体詩は詩型によって絶句(四句)、律詩(八句)、排律詩(十ニ句
以上の長詩)とわけます。
その中の、絶句の作詩の基本について説明します。
絶句には五言絶句と七言絶句があり、五言絶句は一句(一行)の字数
が五字からなる四行詩で、一編は、二十字になります。
七言絶句は、一句(一行)の字数が七字の四行詩で、一編は二十八
字で、出来ています。
絶句の構成について、各句毎の呼び名は、一句目を起句、二句目を
承句、三句目を転句、四句目を結句といい、略して、起・承・転・結、
と呼んいます。
各句の表現について。
起句は、詩のうたいおこし。場所や景色、詠い初め、感動の背景等を
述べる。承句は、起句をうけてその内容をさらに詳しく述べ深める。
転句は、場面を転換する。(話題の転回)情景の描写から作者の情念
(ものに感じて心にわく思い)を言葉で述べることへと向かう。
結句は、転句の転回を受けながら全体を収束する。(感動の中心又は
主題を述べる)起句と承句で詩をうたい起こす為に、一つの纏まった
内容になるように、又転句と結句も一つのまとまった内容になる
ように。なお結句は全体の締めくくりとなるようにすること。
平仄と押韻
漢字の音には平音(ひょうおん)と仄音(そくおん)とあります。
漢字の発声のしかたからくる区別です。
平音の字は平声(ひょうせい)とも平字(ひょうじ)ともいいます。
仄音の字は仄声(そくせい)とも仄字(そくじ)ともいいます。
中国では、ほぼすべての漢字はみな、この、平,仄のどれかに属して
います。平音(平声)は高低や抑揚のない平らかな発音のこと。
仄音(仄声)は発声が抑揚のある、シャープな発声のことです。
仄音(仄声)には上声、去声、入声(にっせい)とあり上声は高く
強く尻上がりの発声,去声は、はきりと中下り尻上がりの発声、
入声は、急いで短く発声し尻下がりの発声です。
平声・上声・去声・入声、をまとめて、四声と云います。
図で示すと
上声 。 。 去声
平声 。 。 入声
押韻とは
韻とは、漢字の音の語尾のひびきのことで、平字は平韻となり、
仄字は仄韻となります。
押韻とは韻をふむということで、語尾の同じひびきの字を一句の終
わりに配することでその配しかたに、作詩法上の決まりがあります。
五言絶句は、二句目(承句)と四句目(結句)の最後の字が韻を
むということですが、一句目(起句)の終わりに韻をふむ場合も
あります。七言絶句は、一句目(起句)と二句目(承句)と四句目
(結句)の終りの字が、韻となります。尚、押韻は、平韻を使うと
覚えておいて良いと思います。
韻には、平韻群と仄韻群があります。
平韻群には、三十の平韻群があり、上平韻と下平韻の2種類があります。
詩語表により、平韻群と仄韻群の中から詩文に適した詩語を利用して
作詩します。押韻の大原則に韻を踏む(押韻)場合の韻字は平韻三十
の中から使用することとあり絶句の場合一つの詩には必ず一つの群から
選らぶこととあり、二つも三つもの韻群にまたがって押韻することは、
できないうことです。
漢詩にはなぜ平仄韻が必要か、又韻を踏むという法則があるのかその
理由の、
理由の、 第一は、中国人は漢字をすべて、音で読んでいる。
第二は、漢詩は韻文であるため、音律とリズムを重んじるからです。
七言絶句の場合一句目(起句)の終りの字と、二句目(承句)の終り
の字と四句目の終りの字(五言の場合は二句目の字と四句目の字)が
同じ響きの韻であると、そこに,ここちよい、音律の美しいひびきが
あり、箏や尺八の伴奏に合わせて詠う時、諧調音が生まれてきます。
そのため、漢詩が吟詠向きであるとも言えます。
畳韻、双声など、別に専門用語があります。が省略します。
又 詩語表の見方、熟語の見方、脚韻群の見方、転句群の見方、
韻字表、他については、漢詩専門家の指導者について習って身につ
けることです。
作詩について、少し述べることにします。
転句、結句に詠もうとする主眼をおいて、一つにまとまるようにつ
くり、起句、承句がそれを起こすような一つのまとまりができるよう
に作ることです。漢詩を作ると云うことは、中国で発生した漢詩を作
るということですので、漢詩作法の方式によって作らないと漢詩には、
ならないです。
漢詩作法方式についてのべます。
五言絶句平起式
(起句の二字目が平字 ○ ) ◎印は韻字
其の一 (原型) 其のニ (応用・変形)
○ ○ ○ ● ● ◐ ○ ○ ● ●
起 平 平 平 仄 仄
● ● ● ○ ◎ ◑ ● ● ○ ◎
承 仄 仄 仄 平 平
● ● ○ ○ ● ◑ ● ○ ○ ●
転 仄 仄 平 平 仄
○ ○ ● ● ◎ ◐ ○ ◑ ● ◎
結 平 平 仄 仄 平
平字を○丸、仄字を●丸 で表したもの
原型のみで作詩すると、詩語が固定され詩の想いが表現できない
場合いがあるので、一字目と、三字目は平字でも仄字でも良いと言う
ことで ◐ ◑ となります。
五言絶句仄起式
(起句の二字目が仄字 ● ) ◎印は韻字
其の一 (原型) 其のニ (応用・変形)
● ● ○ ○ ● ◑ ● ○ ○ ●
起 仄 仄 平 平 仄
○ ○ ● ● ◎ ◐ ○ ◑ ● ◎
承 平 平 仄 仄 平
○ ○ ○ ● ● ◐ ○ ○ ● ●
転 平 平 平 仄 仄
● ● ● ○ ◎ ◑ ● ● ○ ◎
結 仄 仄 仄 平 平
一字目は、平字でも仄字でも良い。承句の三字目は平字でも
仄字でも良い。承句と結句の最後の字が韻字になります。
七言絶句の平仄と、押韻のきまり。
七言絶句平起式
(起句の二字目が平字 ○) ◎印は韻字
其の一 (原則) (其のニ 応用・変形)
○ ○ ● ● ● ○ ◎ ◐ ○ ◑ ● ● ○ ◎
起 平 平 仄 仄 仄 平 平
● ● ○ ○ ● ● ◎ ◑ ● ◐ ○ ◑ ● ◎
承 仄 仄 平 平 仄 仄 平
● ● ○ ○ ○ ● ● ◑ ● ◐ ○ ○ ● ●
転 仄 仄 平 平 平 仄 仄
○ ○ ● ● ● ○ ◎ ◐ ○ ◑ ● ● ○ ◎
結 平 平 仄 仄 仄 平 平
七言絶句の場合は、一字目と三字目と五字目が平仄どちらでもよいが、
起句と結句の五字目は、● でないと六字、七字目が下三連(○○○)
となり、平字が三つ重なることで、音律調節上、好ましくないので使
わない。
七言絶句仄起式
(起句の二字目が仄字 ●) ◎印は韻字
其の一 (原則) (其のニ 応用・変形)
● | ● | ○ | ○ | ● | |||||
起 | 仄 | 仄 | 平 | 平 |
● ● ○ ○ ● ● ◎ ◑ ● ◐ ○ ◑ ● ◎
起 仄 仄 平 平 仄 仄 平
○ ○ ● ● ● ○ ◎ ◐ ○ ◑ ● ● ○ ◎
承 平 平 仄 仄 仄 平 平
○ ○ ● ● ○ ○ ● ◐ ○ ◑ ● ◑ ○ ●
転 平 平 仄 仄 平 平 仄
● ● ○ ○ ● ● ◎ ◑ ● ◐ ○ ◑ ● ◎
結 仄 仄 平 平 仄 仄 平
応用・変形の図で、承句の五字目だけが●になっているのは、○になると、
と、下三連(○○○)となるので、下三連は禁ずる為、それを避けるとい
うことです。 漢詩のきまりについて言葉で説明します。
(五言、七言、平起式、仄起式、起・承・転・結 句すべてにあてはま
る覚えかたです)
1、二四不同 (五言、七言絶句):一句の中の二字目と四字目の平、
仄が正反対になること。
2、二六対 :一句の中の二字目と六字目が同じ平、仄になること
3、一三 論ぜず(五言絶句) :五言絶句の場合一字目と三字目は、
平、仄がどちらでもよい。
4、一、三、五論ぜず(七言絶句):七言絶句の場合、一字目と三字目
と五字目は、平仄がどちらでもよい。
5、下三連(かさんれん)を禁ずる:一句の終りの三字が平・平・平
(○○○)となるのを避けるということ。
(例・○○○はよくないが●○○、○●○、ならよい。絶句の全般に
言えることです。
6、孤平を避ける
まだ色々とありますがここまでにして、自作の漢詩を
載せてみます。
七夕祭り 寺岡 享彦 作
南風に 滿つ ㇾ 入って 笑嬉の 聲
短冊に 願望を 書く 幼い 情
光彩の 銀河 天上に 見る
牽牛 織女 媾和して 迎えん