(1)  詩吟のうた声
詩吟は、漢詩や和歌、短歌や俳句等のなかに込められた作者の心に共鳴し、
それを自分のものとして、声にだして表現する芸術です。
心の豊かさや、気持ちの充実という要素が大きく反映します。

(2)声の出し方
声の出し方
① 詩文、詩の内容のわかる発声(発音)で声をだす。そのために
素読を何回も行う。

② 詩の内容を強く表現する聞かせどころは、詩の盛り上がる部分
(サビを聞かせる部分)は、転句か結句に多い例外もある。
強く表現する方法は、おなかを締めて、おなかから、胸声と複式呼吸
で、高音を響かせて表現する。

③ 詩意(詩がいわんとしていること)即ち、詩の心、作者の思い、
詩の意味、 詩の持つ味わい、(詩の気持ち)を自分のものとして、
声に出して表現する。

④ 自分にあっている吟(詩)か、唄いやすいか。おはこ(十八番)
を作る。

⑤ 吟題(詩)によって、どんな詠い方をするか、声の出し方をするか。
声の出どころを探す。
心の入れ方、気持ちの持っていき方(気持ちの入れ方)について、
作詩した時 の作者の背影(時代)について、研究したか。

⑥ 心の豊かさや、気持ちの充実の要素が反映されるように、聞く人
に、 感動を与える、朗々とした、響きのある声が出来ているか。

(3)共鳴の位置と重心の移動
① 重心(意識の集中点)の設定を、せいか丹田(臍のすぐ下)に設定
する。
せいか丹田に、意識を集めることにより、そこに、身体の重心を想定し、
身体の他の場所を意識から解放して余分な力を抜く。
せいか丹田の中にピンポン玉を想定して、意識し集中する。

② 中声、弱声(第一発声法)の上行で、芯のある発声。

(第一発声法)
手の平を下にして、横隔膜の所に持ってきます。その手の平を意識
して声を中声で遠くに響かせます。
次に声を高くしていきます。声が高くなるにしたがって、お腹(胃袋)
のあたりがへこんでいきます。それと同時に、せいか丹田に設定した
重心も上がっていきます。手のひらも順次上に首のあたりまで上げま
す。共鳴の幅は狭く小さくなり、次に声を下げるときは、共鳴の幅は、
次第に広がり横隔膜も元の状態となり、重心も元のせいか丹田に戻り
ます。これが、重心の移動です。

③ 強声(第二発声法)で強く響きのある発声。
強声第二発声法
音階が上がるにしたがって、重心を押し下げます。
手のひらを重心の位置と仮定し、手のひらを下にして、胸のへんに置
きます。ミ(三)の音から、ファ(三‘)の音で、初め、音階が上がる
にしたがって、手のひらを下げます。
せいか丹田に設定している重心を同時に押し下げます。
高く、大きく強い声ほど、強く意識し下に踏ん張る気持ちで発声しま
す。

④ 第一発声法は、声が上がるにしたがって、重心の位置も上がります。

お腹も使いますが、ほぼ胸声になるため、発声する胸の容積を小さく
する、ことで芯のある小さい声を出すことが出来ます。
腹筋を使った胸式法です。

⑤ 第二発声法は逆で、声が上がるにしたがって重心の位置は下がりま
す。 腹筋を強く使うので、力強い声になります。

腹から出す強声ですので、複式呼吸を使って行います。
気魄のある詩吟を志すこと。ただ力強いだけ。又は力みのある吟では
いけません。
(気魄とは:作者が詩によって訴えようとしている、その思いを吟者は
吟声によって表現する強い意思のはたらき。)
その為には、詩を読む、読解力を身につけること。又、複式呼吸を完全
にマスターすることです。

(4)大きい声と、遠くに響く声の違い

①声の大きさと、節回しにばかり氣をとられると、肝心な語る部分の発声
が、疎かになり、詩の意味が適確に表現されません。

②朗読で、表現することに氣を配り、気持ちを込めて、繰り返し、何回も
朗読をします。

③腹筋を働かせ(腹筋を使い)横隔膜が上に緊張する様に、自ら自主的
に詩句の一音、一音を明確に遠くにいる人に聞かせるつもりで、
発声する。お腹を引き締めて、横隔膜を上に緊張することにより、遠く
に響く声になります。
詩の読みの後母音に返す、生み字の母音は、全身に響かせるため、下方
に意識を働かせる。それとともに横隔膜は、下方に緊張します。

ヒトは(ヮ) ァ  ア       ヒトは(ヮ)  ア
詩句は密度高く、小さく明確に   詩句と母音が同じ大きさの吟は遠く
に響かず、やかましい吟になる。

④吟声を遠くに、響かせる為には詩句を、密度高く小さく吟じ、母音に
なってからだんだん大きく全身に響かせます。

詩句は、一音、一音、口の前の口で、吟じるような気持で明確に発声
します。体の前に響かせること。詩句の後に生まれる母音は渡りの処
理をして共鳴の良い母音で節を回します。

大事なのは、発声、体の使い方、意識の持ち方、などで、聞く人の心に
心地よく、響く吟を目指すことです。

(5) 声が響かない原因

①音が合ってないので、重心の位置を動かして、よく響く重心の位置を
つかむこと。

②声が前にでない、 広くなっていた喉(咽喉)が、深い共鳴を起こし
ているため。
舌根(舌の根本の部分)が上がっていることによる場合もあります。

舌の付け根を押し下げるようにして発声すると、明瞭な発声になり
ます。
アゴを少し引くこと。

(6)声がざらつく、声帯疲労

声のざらつき
①声帯の使いすぎ。

②同じ声出しを長時間続けないこと。

③やり過ぎた練習をしない。

④どこかに、無駄な力が入っていて、余計に疲れてしまう。