心に響く吟詠

(1) ことだま

琴は琴の音として聞こえ、尺八は尺八の音として、聞こえるのは、

そのものが 持っている音色の違いに依って分かるもので、その音に

含まれている、 倍音の組み合わせによって、音色が決まるのです。

詩吟は、邦楽であり邦楽としての意識をしっかり持って、

勉強することが大切になります。

詩吟独特の語り物と、歌いものとを併せ持った、魅力を十分に生かす

ためにはまず、言葉の部分(詩句)、語りの部分(詩語)を大切に

吟じることを常に心がけて、練習に励むことが肝要です。

どこが言葉の部分で、どこが語りの部分かをみきはめ、、

語りの部分ではそれぞれの音節をはっきりと前に出します。

言葉を前面に響かせるつもりで発声し、生み字に開いてからは、

意識を背面と体の中心に移動して発声します。

すなはち、詩句の部分は意識の位置を体の全面において、前に響かせ、

生み字の母音では、体、全体に響くように、中央に意識を置くことです。

語りの部分を大切に吟じるということは、

言葉の持つアクセントを正しく、吟じることは言うに及ばず、また、

別に言葉の一音、一音の強弱、詩情に合った各音節の強弱を正確に感

じとることが大事です。その上で、強と感じる音節は、強拍に弱と

感じる音節は弱拍に当てはめて、吟じることにより、自然とリズムや

間が生まれ、 聞く人の心に残る味わいのある詩吟になります。

これらの事を常に意識し、詩の内容を十分にそしゃくした上で、

朗読する習慣をつけることが大切です。

詩を十分に理解した上での吟詠は必ずしも美声でなくとも聞く人の心

に響くものがあります。

言葉には霊が宿る。

日本には、古くから言霊(ことだま)といって、言葉には霊が宿る

と考えられてきました。

詩吟を愛する私たちも、言葉に対する感性を養うことに努めたい

ものです。

テレビも教養番組より、娯楽番組の方が圧倒的に視聴率が高い現代で。

言葉も随分乱れてきています。

吟剣詩舞道は自らの心を正し、礼節を重んじる芸道です。それは、

優れた詩歌の言霊の働きによるものであると思います。

人の心を浄化し、清純な境地に導いてくれる  道を大切に

学んでいきたいものです。